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ひとりで悩まないで:貸金業法改正/上 主婦への審査、厳しく

毎日新聞/06月07日

 貸金業者への規制や監督を強化する改正貸金業法が18日に完全施行される。貸し付けを年収の3分の1までに制限する「総量規制」の導入と、上限金利の引き下げなどが柱で、これまでにも段階的に導入されてきた。目的は多重債務問題の解決だが、借金を抱える人の中には、追加融資を断られて生活費にも困るなど制度改正に戸惑うケースも少なくない。改正を巡る影響と、借金問題解決の取り組みを報告する。
 ◇夫の同意書要求、新規融資拒否…広がる困惑

 「総量規制で、夫に隠していた借金がいずれ分かってしまう。死んで生命保険で整理したい」

 多重債務に悩む女性を支援するNPO法人「女性自立の会」(東京都)を訪れた専業主婦の恵美さん(44)=仮名=は、そう言って泣き崩れた。会社員の夫(46)に内緒の借金が、今年1月の段階で約400万円。転勤時の引っ越しなど急な出費で生活費がかさみ、自分名義の百貨店系のクレジットカードで行ったキャッシングが最初だった。しかし返済が進まず、やがて夫が家に置いたままにしていた複数のカードを無断で使うようになり、ふくれ上がったという。

 改正貸金業法の完全施行では、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1までに制限される「総量規制」が導入される。複数の貸金業者から借りている場合、合計の借入残高が年収の3分の1を超えると、新規の借り入れはできない。収入がない専業主婦は夫の収入と合わせて収入の3分の1までしか借りられず、仮に融資ができても、夫の同意書や収入証明書の提出などを求められる。

 自立の会の有田宏美理事長は「最近は、総量規制に関する相談が増えた」と語る。「死にたい」と訴えた恵美さんの場合、夫の年収が約400万円で、継続して借り入れを続けることは不可能。総量規制を報道で知った恵美さんはどうしていいか分からず、自立の会にかけこんだのだった。結局、有田理事長が夫に同席してもらい事情を説明すると、夫は恵美さんを責めず、夫婦それぞれの債務整理を弁護士に依頼して進めることになった。有田理事長が過去に受けた相談で「借金を理由に離婚した人はいない」という。

 「借入限度額の残高が不足しています」

 ATM(現金自動受払機)画面の表示を見て、首都圏に住む60代の専業主婦、由紀さん=仮名=は立ちすくんだ。今年4月、信販会社のカードで30万円のキャッシング(小口融資)をしようとしたが、ダメだったのだ。これまで同社のキャッシングを何度も利用し、分割返済もきちんとこなしてきた。前日に前回分を返済したばかりで、「これまで返済翌日には融資を受けられたのに……」と肩を落とした。

 病気がちの夫と娘の3人暮らしの由紀さんは、夫や娘に内緒で2人の名義の複数のカードでも借金があり、返済時期が迫っていた。信販会社に相談すると担当者に「主婦に返済できる根拠があるんですか」と言われたという。

 改正貸金業法の完全施行を見越して、消費者金融や信販会社などは、融資審査の厳格化を図ってきた。由紀さんのケースのように、返済から新規融資までの期間が長くなるのも審査厳格化の一環だという。由紀さんは地元の司法書士に相談し、債務整理の手続きを引き受けてもらった。

 貸金業者が貸し出しを急激に絞り込む背景には、完全施行による「上限金利の引き下げ」がある。上限金利は現在、利息制限法が定める「年15〜20%」と、超過すると刑事罰の対象になる出資法の年利29・2%の二つがあるが、完全施行後は低い方の「年15〜20%」に一本化される。借りる側にとっては、金利が低いほうがいいが、貸金業者はこれまでに実質的に、上限金利を引き下げており収益は悪化している。収入があり、貸し倒れるリスクが小さい貸出先を選んで貸す傾向は強まっており、大手4社の場合、借り入れの申し込み3件に対し、融資をするのは約1件にとどまっている状況だ。日本貸金業協会は「貸付額が絞られて、借りられなくなる専業主婦は今後も増えるだろう」と話している。

 自立の会の有田理事長は「どこに相談に行けばいいかさえ分からず、一人で悩んでいるひとはたくさんいる。悩みを一人で抱え込まず、自分に必要な情報を得るためにも勇気を持って相談してほしい」と話している。

 ◇法改正「知らない」が6割

 日本貸金業協会が昨年末、貸金業を利用する借り手約4000人にアンケートしたところ、半数が「総量規制」の対象となる「年収の3分の1以上」の借入残高を抱えていた。貸金業者の利用者が約1400万人(日本信用情報機構調べ)であることから推計すると、約700万人が総量規制で新規借り入れができなくなる計算だ。

 一方、専業主婦500人に貸金業法の改正について聞いたところ、「ある程度」も含めて「知っている」と答えた人は37%にとどまり、63%が「内容を理解していない」「知らない」と答え、認知度がまだ低いことが浮き彫りになった。

 貸金業を利用する専業主婦の統計はないが、ある関係者は約490万人が何らかの借り入れを行っていると推計する。日本貸金業協会の調査では、「完全施行後は、主婦には貸さない」という貸金業者が全体の85%を占めた。夫と主婦の年収を合算するシステムの開発に費用がかかるだけでなく、「離婚する可能性もある。貸し出すリスクをとれない」(貸金業大手)というわけだ。

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